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【必読】同性婚に代わる4つの相続対策|お勧め順位を司法書士が解説

最終更新日:2025年11月29日

「同性婚ができなくても、パートナーに相続させる方法は幾つもあるらしい」

日本では同性婚が現状認められていないことや、パートナーシップ制度でも相続権を発生させることはできないので、ゲイやレズビアンといった同性カップルの方にとって相続対策は若いうちから重要です。

いざという時に最愛の方が困らない対策をしておきたいですよね。

同性カップルが採れる主な相続対策は下記の4つです。

1 遺  言(最優先)

2 生命保険(相乗効果が大きい)

3 死因贈与(譲受けの確率アップ)

4 養子縁組(慎重に検討が必要)

上記は、私がお勧めと考える順番で並べています。

この順番になる理由を、今回の記事では詳しく解説していきます。

どれを優先して取り組むべきか、判断材料としてお役に立てるかと思いますので、ぜひご覧ください。

1位から3位の表彰台の画像で、遺言や養子縁組などの相続対策の優先順位を示唆している

各制度の意義

-この章の目次-

 1-1.遺言の意義

 1-2.生命保険の意義

 1-3.死因贈与の意義

 1-4.養子縁組の意義

比較検討の前提として、各制度のあらましを解説します。

遺言の意義

遺言は、民法所定の形式で文書を作成しておくことで、自分の意向に沿って遺産を親族や第三者に承継させることができる制度です。

遺言書がないと、遺産は民法の定めに従って一定の親族に相続されることになりますが、遺言があればそちらが優先されます。

生命保険の意義

かつては生命保険金の受取人は、保険契約者の近しい親族に限定されていました。

しかし、最近はLGBTの権利擁護の機運の高まりから、同性パートナーにも門戸を広げる保険会社が増えてきています

死因贈与の意義

死因贈与というのは、贈与者が死亡した時に贈与の効力が発生するという合意をした契約のことです。

遺言との違いは、死因贈与が受贈者との合意によって成立する「契約」であるのに対して、遺言は合意の不要な「単独行為」であるという点です。

養子縁組の意義

養子縁組は、縁組届を役所に提出することで、親子という親族関係を法的に創出することができる制度です。

結婚が、婚姻届を役所に提出することで、夫婦という親族関係を創設できることと類似します。

遺言が第一にお勧め

ここからは各制度の特徴についてメリットを中心に解説していきます。

まずは遺言です。

総合的にみて、遺言は財産を与える側にとって「一番使い勝手がいい」といえる法的手段です。

以下でその理由を詳しく列挙します。

遺言による柔軟な財産分配

遺言であれば、誰に、何を、どれだけ贈与するのかを、「相手の同意なく」自由に決めることができます(単独行為)。

そのため、実家は親族に、それ以外はパートナーに贈与するというような、複数の相手方に対して自身の意向に沿う柔軟な財産分配を行うことが可能です。

cf.それぞれの相手方の同意が必要な死因贈ではそれは困難であり、法定相続分に従う養子縁組ではそれは不可能です。

遺言者の意思の尊重

一度遺言書を作成した後に、いつでもそれを撤回することが可能です(民法1022条)。

ミドル世代であれば、その後自身の身に大事があるまでに大きな時間的ギャップがあることが想定され、その間に状況や意向に変化があるかもしれませんが、その点を懸念せずに、パートナーとお身内のために今最善と思うままの処分をして差支えありません。

cf.相手との合意である死因贈与では撤回が制限されることがあり、養子縁組では離縁事由がなければ離縁できません。

遺言の費用面での柔軟性

遺言の費用面では、リスクヘッジと両立させた選択の幅が広がっており、公正証書にすると平均的な40代の財産状況であれば5万円から8万円程度かかりますが、公正証書にしなくても法務局に保管するという次善の策を国が用意しており、その場合は3900円で済みます

cf.死因贈与では公正証書にしないと保管制度がなく、リスクヘッジの面で不安が残ります。

遺言による秘密保持

遺言は単独行為なので秘密保持も可能で、親族等へのカミングアウトを強いられることもありません。

cf.死因贈与ではそれぞれの相手方の同意が必要なのでパートナー以外への贈与はカミングアウトを迫られ、養子縁組は戸籍や住民票に記載されて養子の氏も変わるなど、完全にオープンな方向けの制度です。

 

以上が遺言の特徴になります。遺言書の作り方等について、詳しくは下記の記事をご覧ください。

生命保険が第二にお勧め

生命保険は、それ単体でもパートナーに財産を残す手段として有意義ですが、遺言等と組み合わせて活用することをお勧めしています。

その理由を生命保険のメリットと併せて以下で列挙します。

生命保険は初期投資が不要

生命保険は保険料が月払いなどで初期投資が不要ですので、気軽に始めることが可能です。

cf.遺言死因贈与の作成補助を専門家に依頼すると報酬が5〜10万円程度、それらを公正証書にすると更に高額の費用がかかります。

ただし、例えば月2000円の保険を5年も継続すれば合計12万円にもなるわけですので、長期的に見れば、遺産承継という強い効力のある遺言の方が費用対効果の面で優先順位が高いといえます。

生命保険は遺留分の対象外

生命保険は遺留分(法定相続人の最低相続分)の対象外ですので、保険金を丸々パートナーに残してさしあげることが可能です。

cf.遺言死因贈与は遺留分の対象になるので、後になって法定相続人から遺産の一定割合に相当する金銭の請求を受ける可能性があります。

そのため、遺留分の対象にならない生命保険を遺言等と組み合わせることによって、遺言等に伴う遺留分侵害への対策資金として有効に機能することになります。

死因贈与が第三にお勧め

死因贈与は、受け取る側にとって「一番安心感が持てる」といえる法的手段です。

以下でその理由を列挙します。

死因贈与は撤回を制限可能

死因贈与であれば、契約の際に贈与者側の理解を得られれば、一定の手当(撤回権の放棄の合意、仮登記の具備など)を講じることで、将来の贈与者の撤回を制限することが可能です。

贈与する側の恣意で、人生を左右されるリスクを減らすことができます。

cf.遺言生命保険は、贈与する側や保険契約者側がいつでも撤回ないし解約することが可能です。

死因贈与は仮登記が可能

死因贈与は、贈与者の生前から仮登記という不動産の名義登録を行うことが可能です。

対抗力はなく順位保全効のみという不完全なものですが、一定の法律上及び事実上のメリットを受けることができます。

cf.遺言養子縁組では、不動産を有する者の生前において、遺贈を受ける者ないし推定相続人が仮登記を備えることはできません。

死因贈与を遺言よりお勧めできない理由

上記のとおり死因贈与は将来の贈与者の撤回を制限することが可能ですが、不確定要素も大きく、撤回の可否を巡って将来的に訴訟等に発展するおそれも少なくありません。

また、贈与を受ける側も、借金などのマイナスの遺産承継を拒絶できないおそれがあることや、不動産取得税の面で納税負担が遺言よりも重くなるケースもあるなど、デメリットも少なくありません。

将来柔軟に対応可能で、納税を抑えられるケースの多い遺言の方が、基本的にはお勧めになります。

養子縁組は一番お勧めできない

養子縁組は、法的に家族になれるという面で、上記の3つの制度よりも強力といえるものです。

しかし、特にミドル世代の方が養子縁組を行うことはお勧めできません。

その理由を以下に列挙します。

養子縁組が無効になるリスク

養子縁組は、本来親子関係を築くことが目的の制度ですから、夫婦関係を築くために同性カップルが利用した場合、後で養子縁組の有効性について相続人との間で訴訟トラブルに発展するおそれがあります。

養子縁組が将来の同性婚の障害になるリスク

現行法では、養子縁組を行った者同士で結婚することはできません。これは離縁をしても同様です(民法736条)。そのため、将来同性婚が認められるようになっても、養子縁組が結婚の障害になるおそれがあります。

現在話題になっているパートナーシップ制度についても、養親子の関係にある者同士の登録を認めていない自治体もあります(東京都渋谷区など)。

まとめ

同性カップルが採れる主な相続対策には、遺言・生命保険・死因贈与・養子縁組の4つがあります。

それぞれの制度にメリットとデメリットがありますが、総合的に見て第一に検討すべきは遺言です。

柔軟な財産分配、撤回や放棄の任意性、国の保管制度、秘密保持などの面から、最も多くのケースでメリットが大きくなります。

暖色重厚なペンとインクの画像で、同性カップルにおける遺言書の有用性を表現している

そこに生命保険を組み合わせることで、遺留分や相続税にも備えることができ相続対策として万全のものとすることができます。

受取側の安心感を重視する場合には死因贈与も有力な選択肢となりますが、撤回制限を巡る紛争や債務承継のリスク、税負担などのデメリットあるため、利用にあたっては慎重な検討が欠かせません。

養子縁組は制度としては強力ですが、夫婦関係を築く目的での有効性の問題や将来の同性婚への影響など、ミドル世代の同性カップルにとってはデメリットが大きく、基本的には推奨できません。

とはいえ、どの対策が最適かは個々の状況によって異なります。

また、以上は遺産承継の話ですが、死亡の前後にはそれ以外にも対策すべき諸問題が同性カップルには存在します。

法的に家族ではないパートナーによる病院対応や死後事務を念頭において、他の法律文書(医療同意委任契約・死後事務委任契約)の備えも重要になります。

どの法的対策や組合せが、ご自身とパートナーのお二人の将来のために最適なのか、ご不明な点があればお気兼ねなくご相談ください。

本サービスの担当・執筆者

本サービス担当・執筆者の司法書士長野正義の顔画像

長野 正義(ながの まさよし)

保有資格
  • 司法書士(東京司法書士会所属/登録番号:第8353号)
  • 個人情報保護士
  • 知的財産管理技能士(二級)
経歴等

昭和57年 東京都文京区 生まれ

平成16年 中央大学 法学部法律学科 卒業

平成22年 司法書士試験 合格

平成23年 簡易裁判所の訴訟代理権試験 合格

一般企業の法務部、大手の司法書士法人等を経て、現職。

メッセージ

裁判所への書類や企業間契約書など、法律文書の作成を専門として15年程の実務経験があります。定型文中心の行政申請業務が主流の司法書士業界では珍しい経歴かもしれません。

現在は特に、同性カップルの法的課題に対する支援に注力しており、遺言書や医療同意委任契約など、法的効力や実務上の実効性を重視したサポートを行っています。

「一人の人生の大事な局面に関わる責任」を重く受け止め、依頼者の思いに応える成果を提供できるよう、今後も研鑽を続けて参ります。

好きな言葉

・至誠一貫   ・第一義

趣味

・茶道(裏千家/許状:行之行台子)

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