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最終更新日:2026年3月1日
「国も同性カップルを事実婚と認め始めたらしいけど、その内容をきちんと知っておきたい」
レズビアンやゲイなどLGBTの方の中には、政府が同性カップルを事実婚と認め始めたというニュースをご覧になった方も少なくないと思います。
2025年に政府は33の法令について同性パートナーも事実婚配偶者としての適用を受けうると公表しました。
日本の法令の条文の中には「ここで言っている配偶者には事実婚の相手方も含みますよ」と規定していることが結構あります。
この意味合いは、法律上の結婚をしていないパートナーでも夫婦の実態があれば、その条文が指定する範囲に限り配偶者としての権利を認めるか、又は義務を課しますよということですね。
ここでいう事実婚という条文の文言は、それまでは異性間の事実婚のみを指すものと解釈されてきました。
それが今回、LGBTの権利擁護の機運の高まりを受け、政府も33法令について同性間の適用可能性を認めることになりました。
上記の政府公表について、他のネット記事では政府の対応の良し悪しを論じているものが多いですね。
それも大事ですが、政府が適用可能性を認めた33法令について個別的に紹介しているネット記事は少ないように感じます。
33法令といっても、その内容や影響の程度は様々です。
借地借家法のように多くの方に適用されるものもあれば、借金問題・災害・犯罪など特定の場面でのみ問題となる規定もあります。
そこで本記事では、33法令について、分類整理をしながら個別に解説していきたいと思います。
パートナーシップ制度を利用している方や、長年同性パートナーと生活している方は、ぜひ最後までご覧ください。
まずは権利面を見ていきます。
| 分類 | 法令数 |
|---|---|
| 住宅の確保 | 6 |
| 借金取立てからの保護 | 2 |
| DVからの保護 | 1 |
| 災害や犯罪被害の救済 | 6 |
| 犯罪施設被収容者の親族認定 | 4 |
| その他 | 4 |
このように俯瞰してみると、「住宅の確保」と「災害や犯罪被害の救済」の法令が多いことが分かります。
国は、同居する同性パートナーに一定の条件下で住宅賃貸借契約について相続類似の効果を認めたり、同性パートナーと同居する住宅困窮者(低所得者・高齢者など)にも賃貸借の間口を広げようとしており、住宅という生活基盤はなるべく確保しようとしているようです。
また、2024年3月26日の最高裁判決に応じる形で運用を改め、災害や犯罪で亡くなった方の同性パートナーにも弔慰金(見舞金)の支給が認められるようになり、突然の伴侶の死亡により深刻な心身財産の苦労に直面した方に対しては一定の救済がなされるようになりました。
ここからは、33法令について個別に解説を加えていきます。まずは権利面の23法令を見ていきましょう。
なお、下記で事実婚配偶者に同性パートナーが含まれると解説している場合であっても、実際の条文適用の場面では個別判断となることにご注意ください。
つまり、その同性カップルが事実婚関係にあるといえるにはどの程度の事情(長期の共同生活や家計の同一など)が必要なのか等の面で、所管官庁が法令の趣旨を踏まえて個別的に判断することになるので、必ずしも簡単に認められるわけではありません。
事実婚の認定については、詳しくは下記の記事をご覧ください。
死亡した賃借人に相続人がいる場合は、上記の借地借家法の規定の射程外ですが、判例で内縁の妻の居住継続を認めたものがあります(最判昭和 42・2・21)。
そのため、同性パートナーについても同じ理屈で保護される可能性はあります。
ただし、あくまで可能性の話ですので、相続人がいる場合でも同性パートナーも居住継続できるかについては争いになりうる点、注意が必要です。
民間の賃貸住宅についても、一定の対象者の居住促進を目的とする各種住宅制度(サービス付き高齢者居住制度・住宅セーフティネット制度・特定優良賃貸住宅制度)において、事実婚配偶者を同居親族や同居配偶者に含めており、同性パートナーも同様に取り扱われます。
借主の住宅が強制管理(強制執行の一種)の対象になった場合でも、債務者やその同居の親族は一定期間その建物に住み続けられる可能性を残す規定であり、同性パートナーも保護の対象になります。
DV防止法は、配偶者暴力相談支援センターでの支援や、裁判所の保護命令(一定期間の接近禁止命令、電話禁止命令など)を定めていますが、同性カップル間のDVも対象になります。
犯罪被害の遺族に対する各種給付制度においては、同性パートナーも犯罪被害者の配偶者として支給対象や支給額の加算対象に含まれます。
>犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律 5条1項1号など
>犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律施行令 5条3項など
>オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律 4条1項1号
少年事件で不当に身体拘束を受け、その補償を受ける前に少年が死亡した場合において、その遺族等が代わりに補償を受けられる可能性を認めた規定であり、同性パートナーもその補償対象になります。
刑事施設や少年施設、入管収容施設に関する各法は、面会や手紙のやり取り、所持品の受取りなどを被収容者の親族ないし配偶者に認めており、同性パートナーも同様に取り扱われます。
これらの法令は、一般的な実生活で適用が問題となる場面は限定的ですので、詳細は各法令の条文をご確認ください。
>裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第十六条第八号に規定するやむを得ない事由を定める政令 3号・4号
児童虐待の通告があると、行政が必要に応じて児童の安全確認や一時保護などの対策をとりますが、この児童虐待には「配偶者」へのDVを児童の前で行うことも含まれ、ここでいう配偶者には同性パートナーも含まれます。
公益法人・社会福祉法人・学校法人等の公共性の高い法人が私物化されないように、これらの法人が役員やその「近親者等」に対し特別の利益を与えることは禁止されており、ここでいう近親者には同性パートナーも含まれます。
安全保障や経済基盤に関わる機密情報を扱う職員の身辺調査制度では、その職員の同性パートナーについても調査対象に含まれます。
暴力団員は自分や「配偶者等」のために役所に許認可等を不当に求めることが禁止され、また、暴力団員やその「配偶者等」は入札から排除されますが、ここでいう配偶者には同性パートナーも含まれます。
>暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 9条21号イなど
外国の重要公人(元首、閣僚、中央銀行役員など)やその「家族」は、取引の際にマネーロンダリング防止のため特に厳格な本人確認等が求められることがありますが、ここでいう「家族」には同性パートナーも含まれます。
銃砲等の所持許可の審査では、申請者本人だけではなく同居の「親族」による悪用や自殺のおそれ等も考慮され、ここでいう親族には同性パートナーも含まれます。
上記でご覧いただいた33法令以外にも、男女間の事実婚であれば適用されうる法令は120に上ります。
しかし、今回の政府公表では33法令以外の同性間への適用は見送られました。特に、社会保障関係の法令がほとんど適用除外されているという点は重要です。
この点を対処するには、現状では民間会社との各種保険契約により自分で備えなければなりません。
また、パートナーとの関係を生前に解消する場合の財産清算についても、現時点では男女間の事実婚と同水準の法的保護までは確立していません。
例えば、慰謝料については限定的に認めた裁判例(宇都宮地裁真岡支部令和元年9月18日判決)があり、また、財産分与を認めなかった裁判例(横浜家庭裁判所令和4年2月14日判決)も存在します。
そのため、この点に備えるには同性パートナーシップ契約(準婚姻契約)で清算方法を明確にしておくことが有効です。
さらに、相続に関する民法の諸規定は、男女間の場合でも事実婚には適用されません。そのため、同性カップルの場合も同様に、どれだけ長く同居していても法定相続人になることはできません。
したがって、遺言書などの法的対策を講じておくことは不可欠といえます。
2025年の政府公表により、同性パートナーも一定の法令において「事実婚配偶者」として取り扱われ得ることが明確になりました。
住宅の確保、災害や犯罪被害への給付、DVからの保護など、生活の基盤や非常時の救済に関わる場面では適用が公認され、従来よりは保護が厚くなったといえます。
しかし、今回認められたのは限定的な場面での保護と言わざるをえません。そのため、任意保険や準婚姻契約、遺言といった自前での備えは不可欠になります。
公的制度でどこまでが認められ、どこからは認められていないのか、その境界を把握することは、今後も一生をともに過ごされるお2人が将来の備えを検討する上でとても重要です。
本記事が、そのご判断の一助としてお役に立てば幸いです。
昭和57年 東京都文京区 生まれ
平成16年 中央大学 法学部法律学科 卒業
平成22年 司法書士試験 合格
平成23年 簡易裁判所の訴訟代理権試験 合格
一般企業の法務部、大手の司法書士法人等を経て、現職。
裁判所への書類や企業間契約書など、法律文書の作成を専門として15年程の実務経験があります。定型文中心の行政申請業務が主流の司法書士業界では珍しい経歴かもしれません。
現在は特に、同性カップルの法的課題に対する支援に注力しており、遺言書や医療同意委任契約など、法的効力や実務上の実効性を重視したサポートを行っています。
「一人の人生の大事な局面に関わる責任」を重く受け止め、依頼者の思いに応える成果を提供できるよう、今後も研鑽を続けて参ります。
・至誠一貫 ・第一義
・茶道(裏千家/許状:行之行台子)