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故人の不動産を相続したら、相続登記(相続による所有権移転登記)を行い、名義人を変更する必要があります。
2024年4月1日より、相続登記が義務化されるため、手続きの流れや必要書類を確認しておくことが大切です。
相続登記の際に作成する書類のひとつが、相続登記申請書です。相続登記申請書に決まった様式はありませんが、登記の目的、原因、相続人、課税価格、登録免許税など、必要な記載事項を満たす必要があります。
本記事では、初めての方がつまずきやすい相続登記申請書の書き方をわかりやすく解説します。
相続登記申請書は、民法などで決まった書き方が指定されているわけではありません。そのため、自分で相続登記申請書を作成し、法務省に提出しても構いません。
自分で作成するのに不安がある場合は、法務省の「不動産登記の申請書様式について」のページで、相続登記申請書の様式のサンプルや記載例をダウンロードすることができます。
また、相続登記を含む不動産登記は、2020年1月14日より「申請用総合ソフト」を活用し、登記申請書を作成することも可能です。
「申請用総合ソフト」で作成した申請書は、インターネットを経由して管轄の登記所に送信できます。
ただし、住民票の写しなどの添付書面は、原則として原本でなければならないため、窓口で手渡すか、郵送で送付する必要があります。
ここでは、法務省が公開している様式を元にして、相続登記申請書に最低限記載すべき7つの事項を紹介します。
登記の目的
原因
相続人
添付情報
申請日と申請先の法務局
課税価格と登録免許税
不動産の表示
登記申請書
登記の目的 所有権移転
原 因 令和○年○○月○○日相続
相続人 (被相続人 ●●太郎)
○○市○○町○丁目○番○号
持分2分の1:●●花子 ㊞
○○郡○○町○○番地
持分4分の1:●●一郎 ㊞
○○市○○町○丁目○番○号
持分4分の1:●●二郎 ㊞
連絡先の電話番号:00-0000-0000
添付情報 登記原因証明情報 住所証明情報
令和○年○○月○○日申請 ○○法務局御中
課税価格 金○万○○○○円
登録免許税 金○万○○○○円
不動産の表示
所在:○○市○○町一丁目
地番:○番○
地目:宅地
地積:123.45平方メートル
所在:○○市○○町一丁目○番地
家屋番号:○番○
種類:居宅
構造:木造スレート葺2階建
床面積:1階 ○○・○○平方メートル
まずは登記の目的を記載します。相続登記の場合、登記の目的は「所有権移転」か「持分全部移転」のいずれかです。
故人(被相続人)が不動産の全部を所有していた場合は、所有権全体が相続人に移転するため、「所有権移転」と記載します。
一方、故人が不動産を部分的に所有しており、持分を相続人が相続する場合は、登記の目的は「持分全部移転」とします。
次に登記申請の原因(理由)を記載します。
相続登記の場合、以下の例のとおり、原因として「相続」と「相続が発生した日付」(亡くなった日付)を記載すれば問題ありません。
被相続人の氏名を記載して、不動産を相続した人の住所・氏名を書きます。
相続人が2人以上で共有にする場合は取得する各持分も記載します。
氏名の末尾に押印します(実印でなくてOK)。
住所の記載は、「○○町1-1-1」など簡略表記ではなく住民票通りに正確に記載します「○○町一丁目1番1号」。
相続人 (被相続人 ●●太郎) ○○市○○町○丁目○番○号 持分2分の1:●●花子 ㊞ ○○郡○○町○○34番地(住民票コード:12345678901) 持分4分の1:●●一郎 ㊞ ○○市○○町○丁目○番○号 持分4分の1:●●二郎 ㊞ |
住所の欄に住民票コードを記載すれば、後の項目で説明する「住所証明情報」の提出を省略することが可能です。
住民票コード(住民基本台帳法第7条第13号に規定されているもの)を記載した場合は、添付情報として住所証明情報(住民票の写し)の提出を省略することができます。
また、申請書の内容に補正すべき点がある場合、法務局の担当者から連絡がある可能性があります。平日の日中に連絡が可能な電話番号も記載しておきましょう。
相続登記では、添付情報として「登記原因証明情報」、「住所証明情報(住民票の抄本か戸籍の写し)」の2点を提出する必要があります。
登記原因証明情報とは、相続が発生した事実を確認するための書面で、被相続人の出生から死亡までの経過がわかる戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)や、相続人であることがわかる相続人の戸籍全部が該当します。
添付情報 登記原因証明情報 住所証明情報 |
また、登記識別情報通知書の発行を希望しない場合、この欄で「登記識別情報の通知を希望しません」と記載しますが、登記識別情報は発行してもらいましょう。
昔の権利証に代わるもので、相続した不動産を売却する際などに必要となります。
相続登記申請書に相続関係を説明した「相続関係説明図」が添付されている場合、登記原因証明情報の原本の返還を求めることが可能。
「相続関係説明図」が提出された場合には、申請書に添付した登記原因証明情報として提出された戸籍全部(個人)事項証明書(戸籍謄抄本)、除籍事項証明書(除籍謄本)を、登記の調査が終了した後に返却してもらえます(原本還付の手続といいます。)。
登記事項証明書の内容を確認し、相続した不動産についての情報を記載しましょう。
以下は土地を相続した場合の記載例です。
所在:○○市○○町一丁目 地番:○番○ 地目:宅地 地積:123.45平方メートル |
以下は家屋を相続した場合の記載例です。
所在:○○市○○町一丁目○番地 家屋番号:○番○ 種類:居宅 構造:木造スレート葺2階建 床面積:1階 ○○・○○平方メートル 2階 ○○・○○平方メートル |
相続登記をする場合、相続登記申請書を正確に作成し、管轄の法務局に提出する必要があります。
相続登記申請書に決まった様式はありませんが、少なくとも「登記の目的」「原因」「相続人」「添付情報」「申請日と申請先の法務局」「課税価格と登録免許税」「不動産の表示」の7つの事項を記載しましょう。
相続登記申請書の書き方がわからない場合は、法務局の記載例も参考にしてください。
相続登記申請書をはじめとして、登記は正確な情報に基づいて行う必要があります。内容に誤りがあった場合は登記を補正する手間がかかるため、相続登記申請書の正しい書き方を学びましょう。
昭和51年生まれ。平成13年司法書士と行政書士の資格取得後、都内司法書士事務所で勤務。平成19年に独立開業し、平成30年に法人化し司法書士法人黒川事務所となる。また、ファイナンシャルプランニング技能士1級及びCFP®を取得しFPとしても活動している(合同会社つなぐ)。