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認知症の相続人がいる場合の遺産分割協議の方法

相続人の中に認知症の方がいる場合、その人を交えて遺産分割協議をしても無効になってしまう可能性があります。

遺産相続をスムーズに進めるため、被相続人の存命中や死後にできる対策方法を知っておきましょう。

 

今回は相続人の中に認知症の方がいる場合の遺産分割の進め方について解説します。

相続人に認知症の人がいる遺産分割

1.認知症の相続人がいる場合のリスク

相続人の中に認知症の人が混じっていると、以下のようなリスクが発生します。

1-1.遺産分割協議が無効になる可能性がある

遺言がない場合、相続人が全員参加して遺産分割協議をしなければなりません。

しかし認知症が進行して十分な判断能力のない相続人がいる場合、自分で遺産分割協議を進めるのが難しくなります。

 

「意思能力」がない人は単独で有効な法律行為ができないためです。

(意思能力)

民法3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

 

意思能力とは、自分の法律行為の意味を認識して適切に判断する能力です。認知症が進行して意思能力が失われていたら、その人が参加する遺産分割協議が無効になってしまいます。

1-2.認知症の相続人を省いた遺産分割協議も無効

認知症の相続人が遺産分割協議に参加できないなら、その人を省いて他の相続人だけで遺産分割しようと考える方もいるでしょう。

しかし相続人が1人でも欠けると、遺産分割協議は無効になってしまいます。遺産分割協議には法定相続人が全員参加しなければなりません。

 

たとえ意思能力がない相続人がいる場合でも、その人を省いて遺産分割協議をしてはなりません。

1-3.親族が勝手に代理人署名しても無効

認知症の相続人が自分で署名押印できないなら、親族が代理人になって代わりに署名押印しようと考えるケースもあるでしょう。

 

しかし親族は本人から有効に代理権を与えられていないので、勝手に署名押印しても無効です。

他人の署名押印を勝手に行うと「私文書偽造罪」(刑法159条)が成立してしまう可能性もあるので、絶対にしてはなりません。

1-4.相続放棄もさせられない

認知症の相続人が相続放棄すれば遺産分割協議に参加させる必要がないと考える方もいます。

しかし認知症の人が自分から相続放棄することは考えにくいですし、そもそも相続放棄するにも意思能力が必要です。また他の相続人が強要すると相続放棄は無効になってしまいます。

認知症の進行した相続人がいる場合、本人が遺産分割協議に参加できないだけではなく親族が代理もできず、かといって相続放棄もさせられないので遺産分割が滞ってしまうリスクが発生するのです。

2.成年後見人を選任する必要がある

認知症の進行した相続人がいる場合に遺産分割を進めるには「成年後見人」を選任しなければなりません。

 

成年後見人とは、判断能力が低下して自分で財産管理ができなくなった人のために、代わりに財産管理や身上監護を行う人をいいます。

 

成年後見人が選任されるとご本人の財産に関する意思決定ができるので、後見人を遺産分割協議に参加させて遺産分割を進められます

3.認知症の相続人に成年後見人をつけるメリット

認知症の相続人に成年後見人をつけると、以下のようなメリットがあります。

3-1.遺産分割協議を成立させられる

まずは遺産分割協議を進めて遺産分割できることが大きなメリットです。

不動産や預貯金、株式などの財産をきちんと分けて有効活用できます。

3-2.相続財産を適切に管理できる

成年後見人が選任されると、ご本人が死亡するか意思能力を取り戻すまで管理が継続します。

ご本人が自分で財産管理できなくても成年後見人が適切に管理し続けてくれるので、まとまった財産を相続した場合でも安心です。

3-3.身上監護もしてもらえる

成年後見人の業務は財産管理だけではありません。介護施設への入居などを含めた身上監護も行う権限を持ちます。

ご本人の状態が悪くなったり介護する人がいなくなったりして介護施設へ入所する場合や体調が悪化して入院する場合などにも成年後見人がいれば適切に対応できて安心です。

 

なお身上監護とはいっても「成年後見人自身が介護すべき」という意味ではありません。あくまで「介護の方法を決定する立場」という意味です。

4.認知症の相続人に成年後見人をつけるデメリットや注意点

認知症の相続人に成年後見人をつけるとデメリットや注意点も発生します。

4-1.選任に手間と時間がかかる

成年後見人を選任するには、家庭裁判所への申立てをしなければなりません。

申立書や診断書などを用意しなければなりませんし、申立後も裁判所へ行って話をするなどの手間がかかります。他の親族への照会が行われるのですぐに選任されるわけでもなく、2~3か月程度の期間もかかると考えましょう。

 

裁判所の判断によって鑑定が行われると5万~10万円程度の費用が別途発生する可能性もあります。

4-2.親族が選任されるとは限らない

成年後見人の候補として親族を立てることもできますが、必ずしも親族が選ばれるとは限りません。

親族間に争いがある場合や複雑な対応が必要な場合、弁護士や司法書士などの専門家が選任されるケースが多数です。

 

思ったとおりの人が成年後見人になるとは限らないので注意しましょう。

4-3.成年後見人の報酬が発生する

成年後見人として専門家が選任されると、報酬が発生します。

報酬額は管理する財産額によって異なりますが、おおむね月額2万~6万円程度です。

4-4.積極的な財産運用はできない

ご本人の判断能力が失われても、株式投資などを行って積極的に資産を増やしたい方もいるでしょう。

しかし資産を運用すると財産が減るリスクが発生します。成年後見制度はあくまで「本人を守るための制度」なので、成年後見人による積極的な運用は認められません。

4-5.法定相続分で遺産分割するのが基本となる

成年後見人が選ばれても、後見人が自分の判断で自由に遺産分割方法を決定して良いわけではありません。

基本的には「法定相続分とおり」に遺産分割する必要があります。

 

たとえば被相続人の妻が認知症になっていて成年後見人がつき、遺産分割協議を行うとしましょう。

この場合、妻の取得分を法定相続分より減らして子どもの取得分を多くするなどの対応は認められない可能性が高くなります。

自由に遺産分割できないのも成年後見制度のデメリットの1つといえるでしょう。

5.被相続人の生前にできる対策方法

相続人の中に認知症の人が含まれている場合、被相続人の生前であれば以下のような対策が可能です。

5-1.遺言書を作成する

遺言書によって認知症の相続人を含めたすべての遺産分割方法を指定しておけば、相続人らが遺産分割協議をする必要がありません。

 

成年後見人を選任しなくても、被相続人の意思によって自由に遺産を分配できます。

遺言執行者をつけておけばよりスムーズに遺産分割できるでしょう。

5-2.家族のための家族信託を利用する

家族のための家族信託を利用する方法も有効です。

家族のための家族信託とは、信頼できる家族に財産管理や処分を委託する信託契約です。

 

家族信託であれば、委託者(被相続人)が受託者を自由に選べますし、財産の管理運用方法も基本的に被相続人が自由に指定できます。

生前の財産管理だけではなく死後の財産処分方法や最終的な帰属先を指定できるのもメリットとなるでしょう。

 

成年後見とは異なり家庭裁判所の監督を受けないので、積極的な資産運用などもしやすくなります。

6.認知症の相続人が亡くなるまで待つリスク、デメリット

認知症の相続人がいる場合、成年後見人を選任したくないからといって亡くなるまで遺産分割をせずに放置するのはおすすめできません。

 

遺産分割をせずに放置すると、以下のようなデメリットやリスクが発生します。

  • 銀行預金を引き出せない
  • 株式の権利が消滅する可能性がある
  • 不動産の権利者が不明になる
  • 相続税が高額になる可能性がある

相続人の中に重度の認知症が含まれている場合、生前にできる対策方法と死後に成年後見人を選任する方法があります。

当事務所ではFP資格を持った司法書士が相続のご相談に対応しています。

迷ったときには専門家へお気軽にご相談ください。

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監修者:黒川聡史

監修者:黒川聡史

保有資格と所属団体

  • 司法書士:東京司法書士会所属:登録番号4230号
  • 行政書士:東京都行政書士会所属:登録番号第19082582号
  • FP(FP技能士1級:日本FP協会CFP®)
経歴

昭和51年生まれ。平成13年司法書士と行政書士の資格取得後、都内司法書士事務所で勤務。平成19年に独立開業し、平成30年に法人化し司法書士法人黒川事務所となる。また、ファイナンシャルプランニング技能士1級及びCFP®を取得しFPとしても活動している(合同会社つなぐ)。

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