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LGBT(同性)パートナーとの生命保険加入について、相続・税務まで詳しく解説

「結婚している夫婦は生命保険をみんな掛けているけど、パートナーとも掛けた方がいいのかな」

ご自身に万一があったとき、長年連れ添ったパートナーに財産を残してあげたいと思うお気持ちは強いと思います。

日本では同性婚が認められていないため、最近はパートナーシップ制度に注目が集まっていますが、この制度に登録しても法的効力はなく、何らの財産も相続させてあげることはできません。

これは、パートナーと長年一緒に生活し、同性事実婚といえるような関係であっても同様です。

そのため、レズビアンやゲイなど、LGBTの同性カップルにとっては異性愛のカップルよりも若いうちから相続対策を行っておく必要性が高くなります。

日本の現行法では、遺言書が一番有効な相続対策といえるかと思いますが、生命保険契約もお勧めの選択肢の一つになります。

今回は、同性パートナーのための生命保険に加入することの可否や、相続・税務に至るまで、詳しく解説していきます。

生命保険という標題の文書の周囲にペンや手帳、紙幣が置かれた画像で、LGBTカップルの生命保険による人生設計を示唆している

同性パートナーを受取人に指定可能

かつては生命保険金の受取人は、保険契約者の近しい親族に限定されていました。

しかし、最近はLGBTの権利擁護の機運の高まりから、同性パートナーにも門戸を広げる保険会社が増えてきました

例えば、ライフネット生命やアクサ生命などが典型例です。

同性パートナーを受取人に指定する条件としては、上記の2社であれば、自治体の発行するパートナーシップ制度の証明書を提出するか、もしくは同居していることを証明するための住民票の提出でも可能ですので、ハードルはそこまで高くはありません。

住友生命や第一生命、日本生命など、同性パートナーの受取人指定を可能とする保険会社は他にもありますので、ご興味のある保険会社の指定条件をまずは確認してみましょう。

生命保険は遺産分割の対象にならない

生命保険の保険金は、相続財産には含まれず、保険契約で指定された受取人の「固有の財産」となります。

もし相続財産に当たるとすると、一定の親族にも相続分が認められ、遺産分割の対象になりますが、保険金は受取人の「固有の財産」になるので、基本的に受取人が丸々取得することができます

また、遺産分割の対象ではないので相続人との分割のための協議も不要なため、死後速やかに保険会社から保険金の送金を受けることが可能です。

 

一歩進んだ論点「特別受益」

前記のように、保険金は受取人の「固有の財産」になりますが、保険金が高額の場合には例外的に相続財産と認定されるケースもあります(これを法的には「特別受益の持ち戻し」と言います)。

しかし、このような例外は受取人が相続人の場合の話ですので(特別受益という制度は「相続人相互間」での公平を図るのが目的のため)、受取人がパートナーなど相続人以外の場合には問題となりません。

生命保険は遺留分請求の対象にならない

遺留分は、一部の法定相続人に認められた最低限の相続分といえるものです。

例えば、遺言書で全ての財産をパートナーに遺贈すると書いておいても、一部の法定相続人は遺留分として「相続財産の何分の一かの割合」に相当する金額の金銭を請求することができます。

このように、遺留分で請求できる金額は「相続財産」が計算の基礎になるわけですが、前記のように、生命保険の保険金は受取人の「固有財産」であって相続財産には含まれないので、遺留分の計算には含まれません(最判平成14年11月5日)。

つまり、非相続財産として遺産分割の対象にならないだけではなく、遺留分請求の対象にもならないので、分配不要な財産として非常に貴重なものとなります。

遺留分請求と同性カップルの遺言書との関係については、以下の記事で詳しく解説しているのでよければご覧ください。

生命保険は遺産承継対策としても有効

同性カップルの相続対策としては、遺言書が一番有効な相続対策といえるかと思いますが、パートナーに遺贈(遺言書での贈与)がされた財産も、相続税の対象となります。

相続税の納税は、死後10か月以内にしなければなりません。

また、パートナーに大部分の財産を遺贈すると、前記のように、親族から遺留分を現金で支払うことを請求される可能性があります。

遺留分は通常は死後1年以内に請求され、請求を受けたら即時に支払う必要があります。

裁判官が使うガベルの上に乗る豚の貯金箱と電卓の画像

このように、多額の遺産承継の際には短期で相当額の現金が必要になるのが通例ですが、生命保険金はこれらの遺産承継対策としても有効に機能します。

前記のように、生命保険金は分配不要な財産として基本的に受取人が丸々取得することができ、しかも保険会社から死後速やかに送金されるため、相続税や遺留分など即金が必要な支払いへの対応が容易になるためです。

特に、不動産など現金化しづらい高価な財産をパートナーに遺贈する場合は、遺産承継対策として生命保険への加入を積極的に検討しましょう。

生命保険には相続税が課税される

自分が亡くなった時にパートナーに保険金が支払われる保険契約を締結してあげた場合、いざ保険金を受け取ったパートナーには相続税が課されます。

受取人が相続人の場合、保険金に課される相続税の非課税枠(法定相続人の数×500万)というものが適用されますが、パートナーは親族ではなく相続人にはなれないので、この減税措置を受けることはできません。

また、受取人が親子と配偶者以外の場合には、保険金も含めて相続税が2割増額されてしまいます(「相続税額の2割加算」の制度)。

そのため、法律婚の配偶者などに比べると、生命保険金への相続税が割高にはなります。

とはいえ、上記で解説した生命保険のメリットと相対的に考えれば、そこまで気にされる必要もないかと思います。

生命保険のよくあるQ&A

同性パートナーは死亡診断書を取得できる?

生命保険金を請求するためには死亡診断書の提出が必要になります。

しかし、死亡診断書を親族以外に交付することに消極的な病院が少なくありません。

というのも、死亡した後の患者の情報も、個人情報と同等の漏洩防止に病院が努めるべきことが厚生労働省のガイドライン等で定められているためです。

生命保険証書と記載された文書の上に鍵が置かれた画像で、同性カップルが保険金を受領する際の難しさを示唆している

生前に本人が病院に対して、死亡診断書のパートナーへの交付を依頼しておけば問題はありません。また、生前にそのような依頼がなくても、親族がパートナーに協力的であれば、親族の同意を得て死亡診断書を入手できるので問題ありません。

しかし、本人が急な傷病で意識不明のまま亡くなった場合や、親族の協力を得られない場合などで、入手が困難となる事態が懸念されます。

この点の対策として、医療同意委任契約パートナーシップ「契約」(準婚契約)を公正証書等で準備しておくことをお勧めします。

これらの契約において、死亡診断書の受領など、死亡に伴う診断情報を病院がパートナーに開示することに同意する条項を設けておきましょう。

医療同意委任契約については、以下の記事で詳しく解説しているので、よければご覧ください。

同性パートナーへの生命保険は保険料控除の対象になる?

保険に入っている方は、サラリーマンなら年末調整の際に、個人事業主なら2月から3月の確定申告の際に、その年の年間保険料の通知書を勤務先や税務署に提出して、所得税・住民税の生命保険料控除を受けていると思います。

家族のために生命保険を掛けて、それが節税に繋がるので、税金対策として生命保険を活用している人も少なくないでしょう。

しかし、同性パートナーを受取人とする生命保険の保険料は、所得税等の控除対象とすることはできません

保険料控除の対象にできるのは、受取人が自分又はその親族の保険に限定されているためです。

とはいえ、一般的にミドル世代の生命保険料控除で節税できる金額は少額でしょうから、そこまで気にされる必要もないかと思います。

まとめ

生命保険は、同性婚が認められない現状の日本において、パートナーに財産を残すための有効な選択肢です。

より有効な選択肢といえる遺言書の場合、多額の財産をパートナーに承継させると相続税や遺留分が問題となります。生命保険は、これらの問題への対策としても非常に有効です。

というのも、生命保険は遺産分割や遺留分の対象とならないため、基本的に丸々取得できる点や、早期に現金を取得できるため、即金が必要な相続税や遺留分への支払いが容易になるためです。

とはいえ、バランスは重要です。当事務所はLGBTの方にミドル世代での相続対策をお勧めしていますが、高齢でなければ死亡リスクも低いため、対策への投資も当然低額であるべきだと思います。

そのため、相続対策として一番に検討すべき遺言書等について、当事務所では低廉な価格でのサービスを提供させていただいております。

生命保険の保険料についても同様に、30〜40代でしたら月2000円前後でも優良な保険は色々ありますので、遺言書と併せて、まずはその辺りの生命保険からパートナーとの加入をご検討されることをお勧めします。

本サービスの担当・執筆者

本サービス担当・執筆者の司法書士長野正義の顔画像

長野 正義(ながの まさよし)

保有資格
  • 司法書士(東京司法書士会所属/登録番号:第8353号)
  • 個人情報保護士
  • 知的財産管理技能士(二級)
経歴等

昭和57年 東京都文京区 生まれ

平成16年 中央大学 法学部法律学科 卒業

平成22年 司法書士試験 合格

平成23年 簡易裁判所の訴訟代理権試験 合格

一般企業の法務部、大手の司法書士法人等を経て、現職。

メッセージ

裁判所への書類や企業間契約書など、法律文書の作成を専門として15年程の実務経験があります。定型文中心の行政申請業務が主流の司法書士業界では珍しい経歴かもしれません。

現在は特に、同性カップルの法的課題に対する支援に注力しており、遺言書や医療同意委任契約など、法的効力や実務上の実効性を重視したサポートを行っています。

「一人の人生の大事な局面に関わる責任」を重く受け止め、依頼者の思いに応える成果を提供できるよう、今後も研鑽を続けて参ります。

好きな言葉

・至誠一貫   ・第一義

趣味

・茶道(裏千家/許状:行之行台子)

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