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「遺言書の書き方を教えてください」というご相談を受けるケースが良くあります。
遺言書を作成するときには、間違いのないよう正しい書き方を知っておかねばなりません。特に自筆証書遺言は無効になってしまうケースが多いので注意が必要です。
この記事では相続案件に力を入れている司法書士が遺言書(自筆証書遺言)の書き方をひな形、書式つきで解説します。
これから遺言書を作成しようとしている方はぜひ参考にしてみてください。
まずは遺言書のテンプレートを紹介します。
遺 言 書
遺言者 司法太郎 は、本遺言書によって、妻 司法花子、長男 司法一郎、長女 法務優子に対し、次のとおり遺言する。
1. 妻司法花子(昭和○○年○月○日生まれ)に次の不動産を相続させる。
(1) 土地
所在 東京都○○区○○町○丁目
地番 ○○番○
地目 宅地
地積 ○○㎡
(2) 建物
所在 東京都○○区○○町○丁目
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建て
床面積 1階 ○○㎡
2階 ○○㎡
2.長男司法一郎へ以下の現預金を相続させる。
(1)現金1,000万円
(2)○○銀行 ○○支店 定期預金 口座番号 ○○○○○○○
(3)○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号 ○○○○○○○
3.長男司法一郎へ以下の自動車を相続させる。
登録番号 ○○ ○○ ほ○○○○
種別 普通
車名 ○○
型式 ○―○○○
車体番号 ○○○○
4.長女法務優子へ以下の預金を相続させる
(1)△△銀行 ○○支店 定期預金 口座番号 ○○○○○○○
(2)△△銀行 ○○支店 普通預金 口座番号 ○○○○○○○
5.長女法務優子へ以下の株式を取得させる。
○○株式会社の株式 数量○○株
6.本遺言書に記載のない財産が発見された場合、妻司法花子が全部相続する。
7.遺言者司法太郎は、本遺言書の執行者として、以下の者を指定する
住 所 東京都○○区○○ ○-○○-○
職 業 司法書士
遺言執行者 〇〇 ○○
20○○年◯◯月◯◯日
住 所 東京都○○区○○ ○-○○-○
上記のひな形をもとに、遺言書の書き方や注意点をみていきましょう。
POINT1 全文を自筆で書く
自筆証書遺言は、遺言者が全文自筆で書かねばなりません。
一部でもパソコンで作成したり代筆を頼んだりすると無効になります。
タイトル、日付や署名押印もすべて自筆で書きましょう。
用紙や筆記用具について指定はないので、どのような紙やペンを使ってもかまいません。
POINT2 遺言者と相続人や受遺者を明確に書く
遺言書には、相続人と財産を譲りたい相手を正確に書かねばなりません。
相続人については続柄と氏名を書いて特定しましょう。
POINT3 誰にどの財産を相続させるか明らかにする
財産の特定が不十分だと遺言書として意味をなさないので、誰にどの財産を取得させるか、明確にしましょう。
以下で財産の種類ごとに正しい書き方をお伝えします。
【不動産の表記方法】
自宅や投資用物件などの不動産を表記するときには、「不動産全部事項証明書」の「表題部」の記載を引き写します。
地番や地積、家屋番号や建物の構造、床面積などすべて書かねばなりません。
土地の地番や建物の家屋番号は「住所表示」とは異なるケースも多いので、間違えないように注意しましょう。
【預金の表記方法】
預金については「金融機関名」「支店名」「口座の種類」「口座番号」を書いて特定します。
【株式の表記方法】
株式は「発行会社名」「株式数」によって特定します。
【車の表記方法】
車を表記するときには、車検証を見ながら「登録番号」「種別」「車名」「型式」「車体番号」によって特定します。
POINT4 遺言書に記載のない財産について
遺言書を作成しても、死亡までには時間があるので記載のない財産が生じるケースも少なくありません。死後に記載のない財産が発見されたとき、どのように対処するのかも書いておきましょう。
上記のひな形では妻に全部取得させる内容にしています。
POINT5 遺言執行者について
遺言書を作成するときには「遺言執行者」を定めておくようおすすめします。
遺言執行者がいると、相続登記や預金払い戻し、受遺者への遺贈などを遺言執行者が行うのでスムーズに遺言内容を実現できます。
遺言執行者は相続人の中からでも、相続人以外の親戚や友人などから選んでもかまいません。ただ第三者的立場からスムーズに相続手続きを進めるには、司法書士などの専門家を選任するのが安心です。
上記の雛形では司法書士を遺言執行者に選任する内容にしています。
POINT6 加除訂正の方法
遺言書を作成している途中で間違えてしまったときには、決まった加除訂正のルールに従わねばなりません。
訂正する場合には削除する箇所に二重線を引いて消し、加筆する場合には吹き出しを入れて必要な文字を追加します。消した箇所や吹き出しを入れた箇所には、遺言書の押印と同じ印鑑を使って押印します。その上で余白欄に「○文字削除、○文字加筆」などと書いて署名してください。
修正テープや修正液などを使った訂正はできません。
POINT7 日付を入れる
遺言書には必ず日付を入れなければなりません。
日付が入っていないだけで無効になるケースもあるので、忘れないようにしましょう。
POINT8 遺産目録をつける
遺言書には「遺産目録」をつけておくとわかりやすくなります。
遺産目録とは、遺産の内容を表にしたものです。
現預金、不動産、株式などの遺産内容を書きましょう。
(遺産目録はパソコンやコピーでも可)
自筆証書遺言の本文は遺言者が全文自筆で書かねばなりませんが、遺産目録についてはパソコンで作成してもかまいません。
預金通帳のコピーや不動産全部事項証明書のコピーを添付する方法も利用できます。
ただしパソコン文書やコピーを利用する場合でも、必ず遺言者が署名押印しなければなりません。両面印刷の場合、両面に署名押印が必要となるので、忘れないようにしましょう。
(負債がある場合)
もしも借金などの負債があるなら、負債についても財産目録に記載しましょう。負債も相続対象となり、相続人に負債の存在を知らせる必要があるからです。
相続人が相続したくない場合には「相続放棄」できますが、相続放棄は「相続があったことを知ってから3か月以内」に申述しなければなりません。
知らずに3か月以上が経過すると相続人が負債を相続せざるを得なくなる可能性があります。
自筆証書遺言の保管方法には、自分で管理する方法と法務局に預ける方法があります。
自宅や貸金庫などに入れて遺言書を管理する方法です。
紛失のリスクや発見されないリスク、発見した相続人や第三者が隠したり書き換えたりするリスクがあります。
相続人が遺言書を発見したら、家庭裁判所で「検認」を受けなければなりません。
法務局に遺言書を預かってもらう方法です。
原本を預けるので紛失のリスク、隠されたり書き換えられたりするリスクはありません。
相続人に通知してもらえるサービスも利用できるので、発見されないリスクも低減できます。発見した相続人が検認を受ける必要もありません。
ただし有効か無効化の判断まではしてもらえないので、間違った書き方をすると無効になる可能性はあります。
遺言書を無効にしないよう、正しい書き方で作成しましょう。迷われたときにはお気軽に司法書士までご相談ください。
東京、横浜、大阪に相談センターをもうけていますので、お近くの支店をご利用いただけますと幸いです。
昭和51年生まれ。平成13年司法書士と行政書士の資格取得後、都内司法書士事務所で勤務。平成19年に独立開業し、平成30年に法人化し司法書士法人黒川事務所となる。また、ファイナンシャルプランニング技能士1級及びCFP®を取得しFPとしても活動している(合同会社つなぐ)。