相続・遺言に関する手続の総合案内(合同会社つなぐ(FP)×司法書士法人黒川事務所×行政書士黒川事務所の運営サイト)
相続放棄をする際に注意したいのが、故人の携帯に関する手続きです。
相続放棄が完了する前に携帯を解約してしまった場合、故人の相続財産を処分したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。
本記事では、故人の携帯を解約すると相続放棄が認められない理由や、未払いの携帯料金が残っているときの対処方法、故人の携帯を解約するときの正しい流れをわかりやすく解説します。
そもそも、相続の方法は3種類あります。
相続放棄・・・相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない方法
限定承認・・・被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ方法
民法第921条によると、相続放棄ができなくなる場合(法定単純承認事由)が3つあります。
第921条
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
被相続人が亡くなる直前まで携帯を使っていた場合は、機種代金の残金や未払いの利用料金が残っている可能性があります。
相続放棄をしたい場合は、故人の携帯料金の支払いは避けましょう。
とくに故人の遺産で携帯料金を支払った場合、相続財産(債務)を処分したとみなされ、相続放棄の手続きを進められなくなる可能性があります。
なお、自分の財産(ポケットマネー)から故人の携帯料金を支払っても、相続放棄に影響はありません。
ただし、相続放棄をする以上、故人の債務を精算する義務はないため、そもそも携帯料金を支払う必要はありません。
実際にKDDI株式会社の公式発表でも、相続放棄をした場合は「未払い料金も相続放棄となりお支払いの必要はございません」と回答しています。
KDDI株式会社:契約者が亡くなった場合、未払い料金はどうなりますか?
亡くなった契約者さまから相続されている場合は、未払い料金も相続されますのでお支払いが必要です。
相続放棄をされている場合は、未払い料金も相続放棄となりお支払いの必要はございませんが、ご家族の方に解約のお手続きのご協力をお願いしております。
相続放棄の手続きが完了したら、通信会社に対して相続放棄した旨の申告をしましょう。
なお、相続放棄をした場合、相続人ではなくなるため本来であれば携帯の解約手続きもする必要がありません。
なお、相続放棄後に携帯の解約手続きをすると、相続放棄を認めたくない債権者がいたら、裁判手続きで相続放棄を争われ、相続放棄が覆えされ無効となる可能性もございます。
相続人が故人の遺産を勝手に処分した場合、相続放棄は認められません。
そのため、故人の携帯を解約してしまったら、相続放棄ができなくなる可能性があります。
また、故人の携帯の名義を自分に変更する行為や、携帯料金の残りを故人の遺産で支払う行為もNGです。
どうしても故人の携帯の請求を止めたい場合は、まず家庭裁判所で相続放棄の申し立てを行い、手続きを完了させましょう。
なお、相続放棄をした時点で、故人の財産だけでなく債務も一切引き継がないことになります。
そのため、機種代金の残金や未払いの利用料金を支払う必要はありません。
昭和51年生まれ。平成13年司法書士と行政書士の資格取得後、都内司法書士事務所で勤務。平成19年に独立開業し、平成30年に法人化し司法書士法人黒川事務所となる。また、ファイナンシャルプランニング技能士1級及びCFP®を取得しFPとしても活動している(合同会社つなぐ)。