相続・遺言に関する手続の総合案内(合同会社つなぐ(FP)×司法書士法人黒川事務所×行政書士黒川事務所の運営サイト)
成年後見制度は、家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見(法律行為の取消権限を持つ)と、あらかじめ後見人となる人を自分で選んでおく任意後見(法律行為の取消権限の無い)の2種類があります。
そもそも、成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの理由により、正常な判断能力がなくなった人を支えるための制度です。
成年後見制度では、判断能力が無くなった後に、家庭裁判所が後見人を選任し、被後見人の補助・保佐・後見を行います。(法定後見と言います)
後見人を自分で選びたい場合は、認知症等になる前の判断能力があるときに、任意後見制度と呼ばれる制度も利用できます。
そこで任意後見と成年後見の違いを知り、自分に合った後見制度を選ぶことが大切です。
本記事では、任意後見と成年後見の違いや、それぞれの後見制度の特徴をわかりやすく解説します。
項目 | 成年後見制度 | 任意後見制度 |
---|---|---|
制度の概要 | 本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度 | 本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ、任意後見人となる方や将来その方に委任する事務(本人の生活、療養看護及び財産管理に関する事務)の内容を定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人がこれらの事務を本人に代わって行う制度 |
手続き | 家庭裁判所に後見等の開始の申立てを行う必要 |
|
申立権者 | 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など | 本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見人となる方 |
権限 | 制度に応じて、一定の範囲内で代理したり、本人が締結した契約を取り消すことができる | 任意後見契約で定めた範囲内で代理することができるが、本人が締結した契約を取り消すことはできない |
後見監督人 | (必要に応じて)家庭裁判所の判断で選任 | 全件で選任 |
手数料 | 金額 |
---|---|
作成の基本手数料 | 11,000円 |
登記嘱託手数料 | 1,400円 |
法務局に納付する印紙代 | 2,600円 |
その他 | ご本人らに交付する正本などの証書代、登記嘱託書郵送用の切手代など |
認知症などが進行し、被後見人の判断能力が低下した場合は、家庭裁判所で申し立てを行い、任意後見契約を発効し、「任意後見監督人」を選任してもらいます。
任意後見監督人は、任意後見人が被後見人の利益に反する法律行為を行っていないか監督し、必要に応じて家庭裁判所に報告する役割があります。
法定後見の種類 | 対象となる方 |
---|---|
補助 | 重要な手続き・契約の中で、一人で決めることに心配がある方 |
保佐 | 重要な手続き・契約などを、一人で決めることが心配な方 |
後見 | 多くの手続き・契約などを、一人で決めることが難しい方 |
補助 | 保佐 | 後見 | |
---|---|---|---|
申立手数料(収入印紙) | 800円 | 800円 | 800円 |
登記手数料(収入印紙) | 2,600円 | 2,600円 | 2,600円 |
その他 | 連絡用の郵便切手、鑑定料(5~10万) |
後見と保佐を受ける場合は、被後見人の健康状態を確認するため、医師による鑑定を受ける必要があります。鑑定料が10万円を超えることはほとんどありません。
成年後見の種類 | 成年後見人が同意または取り消すことができる行為 | 成年後見人が代理できる行為 |
---|---|---|
補助 | 申立てにより裁判所が定める行為 | 申立てにより裁判所が定める行為 |
保佐 | 借金、相続の承認など、民法13条1項記載の行為のほか、申し立てにより裁判所が定める行為 | 申立てにより裁判所が定める行為 |
後見 | 原則としてすべての法律行為 | 原則としてすべての法律行為 |
被後見人の認知症や障害の程度が重く、後見を受けている場合は、法定後見人が原則としてすべての法律行為を取り消すことができます。
例えば、被後見人が締結した契約(悪質なリフォーム契約等)を後で取り消すことも可能です。
【まとめ】任意後見と成年後見の違いを知り、自分に合った後見制度を選ぼう
任意後見と成年後見は、それぞれ異なる役割を持った後見制度です。
任意後見制度は、将来認知症や深刻な病気にかかったときに備えて、後見人を自分で選ぶ制度のことを指します。
一方、すでに認知症や知的障害、精神障害が進行し、自力で意思決定を行うのが難しい場合は、家庭裁判所が後見人を選任する成年後見制度を利用できます。
任意後見制度は、家庭裁判所の申し立てを行わずに利用できますが、任意後見人の権限は限られています。例えば、成年後見人と違って、被後見人が締結した契約を取り消すことができません。
任意後見と成年後見の違いを知り、自分に合った後見制度を選ぶことが大切です。